ShopifyなどのNoCodeサービスの普及により、ECサイトの構築は手軽になりました。
それに伴い、「他人にサイトのデザインをパクられた!」といったトラブルも起こるようになっています。
今日はそのような事態が起きた場合の対処法を、弁護士が解説します。
著作権が成立するもの・しないもの
著作権は、原則として、それぞれの著作物ごとに発生します。
一般的なEC・ネットショップのウェブサイトを構成するものは「テキスト」「写真」「イラスト」ですね。
著作権法では、その「それぞれ」について、すなわち、ひとまとまりのテキスト、1枚の写真、1枚のイラストごとに、著作権の発生の有無が判断されます。
また、どんなテキスト、写真やイラストであっても著作権が発生するというわけではありません。著作権が発生するためには、その制作物がクリエイティブであることが要件になります(著作権法上は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています。)。
たとえば、「この度は当ショップのご利用ありがとうございました」というテキストは、誰が表現しても似たような表現になるため、創作性を有さず、著作権が成立しないという判断がされる可能性があります。
著作権侵害が成立するもの・しないもの
では、著作権が成立するもの(著作物)を、どこまでパクれば著作権侵害になるのでしょうか?
たとえばウェブサイトのテキストを、一言一句違えずコピペして貼り付けている場合は、著作権侵害は明らかです。
他方で、全体的に表現は似ているが、文書の配置を入れ替えていたり、全体的に細かな表現を変えている場合は、著作権侵害が認められにくくなります。商用のウェブサイトではどうしても表現が似通ってくることもあり、本当に著作権侵害といえるかどうかは弁護士にも相談しながら慎重に判断する必要があります。
写真やイラストについては、コピペして使われているのであれば明らかに著作権侵害です。
若干の加工が施されているとしても、元ネタが明らかにあなたのウェブサイトの写真やイラストなのであれば、同じく著作権侵害です。他方で、「テイストが似ている」というだけで写真やイラスト自体別のものなのであれば、著作権侵害とまではいえないでしょう。
サイト全体の雰囲気が似ている場合は?
では、テキスト、写真やイラストといった個々のコンテンツは、どれも微妙に違うけれど、全体的な配置やサイトの雰囲気が似ている、という場合はどうでしょうか?
この場合は、サイト全体に、「編集著作物」性が認められるかどうかが問題となります。編集著作物とは、「その素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に認められます。たとえば商品カタログやパンフレット、百科事典などが典型例です。
しかし、編集著作物性が認められるハードルは低くありません。
たとえば、用語辞典「知恵蔵」の1994年版と1995年版のレイアウトやフォーマットがほとんど同じだったことが著作権侵害だと争われた過去の裁判事例でも、そもそも知恵蔵のレイアウトやフォーマット自体に著作権が成立することが否定された、というものがあります(東京高判平成11年10月28日)。
ネットショップのウェブサイトでも、(編集)著作物性が認められないケースも多くあります。特に、ShopifyなどのNoCodeサービスを利用して、「今風の」サイトを構築した場合、そのデザインや構成は同じようなものになる可能性が高く、そこに著作権法上の創作性が認められないという結論は十分ありえます。
まずは「何がパクられたのか」はっきりさせる
よく、「サイトがパクられた!」という話を聞きますが、以上のとおり、著作権法はきわめて分析的に対象を検討します。「サイト全体」といった抽象的な論じ方は原則として難しいことを、まず理解してください。
そのため、「パクられた」と感じた場合は、まずはどこが同じなのか、同じように「感じる」のか、テキスト、写真、イラストに分解して、検討しましょう。
たとえば、まったく同じイラストが多数含まれていた、ということであれば、著作権侵害(複製権侵害)ということが可能ですが、雰囲気が似ているだけで、テキストも写真もイラストもひとつとして同一のものはない、ということであれば著作権侵害成立のハードルは格段に上がります。
著作権侵害が成立する場合のペナルティ
著作権侵害が成立する場合には、相手方に対して、損害賠償請求、差し止め請求(相手のウェブサイト上から著作権侵害に該当するコンテンツを削除してもらう)、謝罪文の公表といった民事上の対応のほか、よほど悪質なケースでは刑事責任の追求(10 年以下の懲役または 1000 万円以下の罰金)も可能です。
しっかり証拠を残す!
また、相手方に対してどのような行動をとるにしても、必ず必要になるのが「証拠」です。
「うちのサイトパクったやろ!」とクレームした翌日に、対象のテキスト、写真やイラストが差し替えられていたら、著作権侵害を証明することはできません。その場合、裁判などの法的な手段を講じることは極めて難しくなります。
そこで、スクリーンショットや写真などで、しっかりと著作権侵害と思われるサイトの証拠を残しておくことが極めて重要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
著作権法の分析的な枠組みに驚いた方も多いのではないかと思います。
また、上記「可能性が高い」「可能性が低い」といった表現を多用していることからお察し頂けたかと思いますが、著作物性が認められるか、著作権侵害が認められるかに関する判断は、個別具体に裁判の中で争われて、はじめて結論が出るため、これを事前に予測するには相当の専門知識が必要になります。
そのため、著作権侵害に対して何らかの措置を検討したいと思った場合には、まずは著作権に詳しい弁護士に相談をして、著作物性や著作権侵害の有無について、過去の裁判例などに照らすとどのような結論になる可能性が高そうか、しっかりと確認をしてから、次のステップに進むことをおすすめします。
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また、もうひとつ別の観点として、「パクるのを難しくする」工夫をすることも一案です。たとえば、写真やイラストの隅に、©表示をして著作者名を明示する、画像やイラストに透かし(ウォーターマーク)を入れるといったことで、不正利用を「させにくくする」こともできますので、是非検討してください。