弁護士が教える金銭消費貸借契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的な金銭消費貸借契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

金銭消費貸借契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

金銭消費貸借契約書とは

お金の貸し借りのことを、法律の世界では「金銭消費貸借」と呼んでいます。

金銭消費貸借契約書とは、お金の貸し借り、いついくらを弁済するのか、利率はいくらか、といったことを定めた契約書です。

そのほか、連帯保証人をつける場合はその内容、将来公正証書を作成する場合にはその内容など記載することになります。

各条項の解説

金銭の貸し付け

はじめに、貸付の実行日、貸付額、貸付の方法(銀行振込、現金手渡し等)を記載します。

貸付の方法は、案外大切な事柄です。金銭の貸し借りで多いトラブルが、後日「そんなお金は借りていない」と債務者が主張するパターンです。このような場合に備えて、どのような手段で貸付けを実行するのか、銀行振込の場合は債務者の口座番号まで特定して記載することを推奨します。

第○条(消費貸借)
甲は、乙に対し、次の金員を貸し渡し、乙はこれを借り受けた。
(1) 貸付の日時
  ○○
(2) 貸付金額
  ○○
(3) 貸付の方法
  ○○

借入条件

弁済期限、利息の有無、利息がある場合は利率、支払いが遅れた場合の遅延損害金について記載しましょう。

利息を設定する場合は、利息制限法に注意が必要です。

利息制限法では、現在、以下のとおり上限金利が設定されています。上限を超えた場合、超えた部分については契約が無効になるので注意しましょう。

利息制限法

(利息の制限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

利息と別途、遅延損害金を設定することも一般的です。利息は、契約どおりの弁済をしていても発生するものですが、遅延損害金は、所定の弁済期日までに弁済をしなかった場合に、ペナルティとして発生するものです。

遅延損害金についても、利息制限法上、上限が設けられているため、設定にあたっては注意が必要です。

利息制限法

(賠償額の予定の制限)
第四条 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
2 前項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。

以上を踏まえて弁済の条件を設定することになります。

第○条(借入条件)
1 本契約に基づく借入条件は以下のとおりとする。
(1)弁済期限
○○
(2)利息
○○
(3)利息支払時期 弁済期に元金と併せて支払う。
(4)損害金
○○
2 乙は、甲に対し、前項第1号記載の弁済期限に、第1条の金額及び前項第2号の利息金を送金して弁済する。なお、振込手数料は、乙の負担とする。

連帯保証

金銭の借入にあたっては、連帯保証人を設定することがよくあります(例、法人が借入をする場合に代表取締役が連帯保証人になるケース)。

連帯保証人を設定する場合には、民法で定められた法的な手続義務について注意が必要です。

まず、事業のための借入金について、連帯保証人を設定する場合には、保証人に対して、契約締結時に以下の情報を提供する必要があります。情報提供がされなかった場合は連帯保証契約が取消し可能となるため注意が必要です。

民法

(契約締結時の情報の提供義務)
第四百六十五条の十 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

次に、借入をする法人の役員や株主が連帯保証人になる場合を除き、事業のための借入金について個人が連帯保証人になるにあたっては、保証契約の1ヶ月以内に公正証書によって保証の意思があることを明確にする必要があります。

民法

(公正証書の作成と保証の効力)
第四百六十五条の六 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

これらの手続き規定を意識して、連帯保証人の設定をする必要があります。

第○条(連帯保証)
1 丙は、本契約に基づき乙が甲に対して負担する一切の債務について連帯して保証する。
2 乙及び丙は、民法第465条の10に定められた事項について適切な情報提供が行われたことを確認する。

期限の利益の喪失

どのような事由が発生したときに、債務者が期限の利益を喪失し、弁済期が到来するのかを記載します。

通常は、借入条件で定めた日時が到来したときに、弁済期となりますが、それ以外にも債務者の与信に深刻な事態が発生した場合なども、期限の喪失事由として規定されることが通常です。

第○条(期限の利益の喪失)
乙又は丙について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、甲からの通知催告等がなくても乙及び丙は当然に期限の利益を失い、直ちに甲に対し、元利金とこれに対する期限の利益喪失日の翌日から完済までの遅延損害金を一括して支払う。
(1)本契約に基づく債務を履行しなかったとき。
(2)支払いの停止又は破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算の申立てがあったとき。
(3)手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(4)差押え、仮差押え、仮処分もしくは競売の申立て、又は公租公課の滞納処分を受けたとき。
(5)その他信用を損なう事由が生じたとき。

公正証書の作成

契約書を作成しただけでは、万が一債務者が弁済をしなかった場合、債務者の財産を強制的に差し押さえることはできません。強制的な差し押さえ手続きをするためには、契約書を証拠書類として裁判を起こし、勝訴判決を取得する必要があります。

これに対して、貸付の内容を公正証書に記載し、さらに、弁済がなかった場合に強制執行をされても異議がない旨を記載しておくと、上記の裁判手続きをショートカットすることができます。

このような公正証書を「執行認諾文言付公正証書」と呼びます。

執行認諾文言付公正証書を作成する場合には、次のような文言を契約書に挿入しておきましょう。

第○条(公正証書の作成)
1 乙及び丙は、本契約締結後ただちに、本契約と同一の約定による執行認諾文言付公正証書を作成することに同意し、甲に対して必要書類を提出するものとする。
2 前項の公正証書作成に要する費用は乙の負担とする。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。

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金銭消費貸借契約書を作成するときに気をつけること

以上、金銭消費貸借契約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • 金銭の貸し付け
  • 借入条件
  • 連帯保証
  • 期限の利益の喪失
  • 公正証書の作成

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 濱永健太先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した金銭消費貸借契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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