弁護士が教える配送ポリシーの作り方

この記事では、弁護士が、EC・ネットショップにおける一般的な配送ポリシーの作り方をひな形条文つきで解説します。

EC・ネットショップの運用者で、配送ポリシーを今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

配送ポリシーとは

配送ポリシーとは、読んで字の如く、商品を配送する際の詳細なルールを定めたものです。

配送ポリシーの内容は、EC・ネットショップ事業者側で設定することができます。

逆に、配送ポリシーを定めていないと、そもそも配送料が商品代と別途発生するのかというところから、配送の手続きまで、さまざまなことに解釈の余地が生じてしまい、トラブルになった場合の解決が困難になります。

そのため、EC・ネットショップ事業者は必ず配送ポリシーを定めましょう。

なお、配送ポリシーの策定は、もともとはあまりメジャーではありませんでした。なぜなら、日本では、「特定商取引法に基づく表示」の中で、配送に関する事項も定めるケースが多かったためです。

他方で、EC・ネットショップの普及により、特定商取引法に基づく表示から切り離して、「配送ポリシー」を整備する事例が増えてきました。Shopifyなど海外のECプラットフォームが、配送ポリシーの設置を促していることも挙げられます。

ぜひ、配送ポリシーの設定・設置を検討してください。

各条項の解説

配送料金の設定

まずは、そもそも論ですが、商品代金と別途配送料を徴収するのか、商品代金に配送料を含めるのか(一律送料無料)を検討しましょう。

配送料を徴収する場合でも、取り扱う商品数が少ない場合は、配送料を一律に定めることもできるでしょう。

他方、取り扱う商品数が膨大で、一律の設定が困難な場合は、「各商品ページに記載のとおり」としたり、別途配送料金表を記載することも考えられます。

ここでは、配送料金を商品代金と別途徴収することを明言し、詳細は料金表に委ねる形の一般的な記載例を紹介します。

(配送料金)
お客様は、以下のとおり当社が定める所定の配送料金を支払うものとします。ただし、当社が特に配送料金を無料とした場合には、この限りではありません。

配送時期の指定

大手配送会社のサービス提供により、配送時期を指定することは一般的になっています。

他方で、法律上は、配送時期の指定は義務付けられてはいません。

そのため、事業者としては、配送時期の指定を一切受け付けないとすることも可能です。

他方で、顧客サービスの一環として、また大手配送サービスと連動させるために、配送時期の指定、時間帯指定を受け付けることも検討に値します。

この場合であっても、「絶対に指定した日時に配送する」ことを確約することは危険です。配送には天候不良や人員不足など常にさまざまな不確定事項がつきまといます。最大限の努力はするが、指定時間を守れないこともあることを明言しておくのが良いでしょう。

以下文例を挙げます。

(商品の配送時期)
(前略)3  第1項の定めにかかわらず、お客様が配送時期を特に指定した場合(当該配送時期による商品の配送を当社が特に認めた場合に限ります。)には、当社は当該配送時期に、配送先に商品を配送するよう最大限努めるものとします。なお、天候、交通状態、配送先の地域等の事情により、配送時期が前後する場合があります。

配送会社の利用

契約で何も定めなければ、また、何も明示がなければ、「商品を販売した会社が自ら配送をする」と解釈されてしまう可能性があります。

他方、EC・ネットショップ事業者は、日本郵便やヤマト、佐川などの大手配送会社を利用するケースが一般的かと思います。

そこで、これらの事業者に運送を委託することを明言し、さらに委託先のトラブルで配送が遅延した場合、当社は責任を負わないことを明言しておくと安心です。

たとえば次のような文例が考えられます。

(配送会社による遅延・毀損等)
1 当社は、配送会社の責めに帰すべき事由による配送の遅延又は商品の毀損等については責任を負わないものとします。
2 お客様は、配送会社との間でトラブル又は紛争が生じた場合には、お客様の責任と費用負担においてこれを解決するものとし、当社は当該トラブル又は紛争等について一切関与する義務を負わないものとします。

配送が完了しない場合の取り扱い

顧客都合で、配送ができない場合に、配送料金をすべて事業者が負担すると、大きなコストになってしまいます。

そこで、配送料金を顧客に請求できることを定めておくことが有用です(ただし、実際に請求までするかどうかは、レピュテーションの観点も含めて、個別に検討しましょう。)

また、売買契約自体についても、任意に事業者側の判断で解約できることを念の為に明言しておきましょう。

(配送が完了しない場合の取扱い)
1 当社は、次の各号に定める事由により商品の配送を完了できない場合には、当該商品を回収し、その回収に要した費用(配送会社への委託料等を含みます。)をお客様に対して請求することができるものとし、かつ、当社の判断により当該商品に関する契約を解約することができるものとします。(以下略)

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、左リンク先の記事を参考にしてください。

なお、配送ポリシーと別途、ネットショップの利用規約を設定していることが多いかと思います。このような場合には利用規約ですでに定めてある一般条項は、配送ポリシーには記載する必要はありません。他方で、このような場合には、配送ポリシーと利用規約の内容が抵触・矛盾する場合に、どちらの優先的に適用するのか記載しておくと便利でしょう。

配送ポリシーを作成するときに気をつけること

以上、配送ポリシーを作成するときに気をつけるべきことは、

  • 配送料金の設定
  • 配送時期の指定
  • 配送会社の利用
  • 配送が完了しない場合の取り扱い

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した配送ポリシーを数分程度で作成できますので、手元にひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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