「当ショップの商品はノークレーム・ノーリターンでお願いします。」
「御理解いただける方のみ購入をお願いします。」
EC・ネットショップがこのような記載をした場合、どこまでが法的に有効なのでしょうか?
弁護士が解説します。
ノークレーム・ノーリターンの法律上の意味
「ノークレーム・ノーリターン」ということばは、日本の法律上の用語ではありませんが、一般的には「何か品質に問題があっても文句を言えない」ということを意味しています。
ところで、日本の法律(民法)では、品質に問題があった場合に修補や交換、代金の減額、損害賠償請求、さらには売買契約の解除を求めることができる「契約不適合責任」(平成29年に民法が大改正される前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。)というルールが存在します(契約不適合責任について過去に扱った記事はこちら)。
ノークレーム・ノーリターンというのは、品質に問題があっても文句が言えないということですから、要するに民法上の契約不適合責任の適用を排除する特約、と整理することができます。
ノークレーム・ノーリターンは有効?
では、ノークレーム・ノーリターン、すなわち契約不適合責任の適用を排除する特約は、法的に有効なのでしょうか?
答えは、原則として「原則として有効だが、①契約の相手方が一般消費者の場合、②契約の相手方が事業者でもショップが不具合の内容を知っていた場合は無効」となります。以下詳細に解説します。
契約相手が一般消費者の場合
まず、買主が事業者ではなく一般消費者の場合、契約不適合責任を一切排除する条項は、「消費者契約法」という特別な法律に基づき、無効になる可能性があります(消費者契約法8条1項1号)。
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
しかし、修補や交換に応じる、又は契約不適合の程度に応じて代金の減額に応じるものとしている場合には特約は有効になるとされています(消費者契約法8条2項1号)。
2 前項第一号・・・に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき・・・に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除・・・するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一 当該消費者契約において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該事業者が履行の追完をする責任又は不適合の程度に応じた代金若しくは報酬の減額をする責任を負うこととされている場合
ショップが不具合の内容を知っていた場合
他方で、契約の相手方が事業者の場合、原則として契約不適合責任を排除する特約は有効となりますが、ショップが「知りながら告げなかった事実」については特約の適用は認められません(民法第572条)。
(担保責任を負わない旨の特約)
第五百七十二条 売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条【←筆者注:契約不適合責任に関する条文】に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
たとえば、電源が入らないことを知りながら電源が入らない事実をどこにも記載せずに電化製品を販売した場合、いくらノークレーム・ノーリターンといっても、ショップ側の主張が法的には認められない可能性があります。
利用規約や特定商取引法に基づく表示を整備しよう!
以上を踏まえて、ショップ側が取るべき対応ですが、利用規約や特定商取引法に基づく表示において、単に「ノークレーム・ノーリターン」とあっさり記載するだけではなく、消費者契約に該当する場合には修補や交換、代金の減額に応じることを明示しておきましょう。
また、個別の商品のページにおいて、ショップ側で認識している不具合があるのであればそれを正確に記載するように努めましょう。
なお、利用規約や特定商取引法に基づく表示の作成方法がわからない場合は、法律文書自動生成ジェネレーターKIYAC(キヤク)がおすすめです。KIYACを使えば、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、わずか数分でネットショップ用の利用規約などさまざまな法律文書を作ることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ノークレーム・ノーリターンの意味を正確に理解し、是非、顧客にわかりやすい表示・対応に努めてください。