弁護士が教える特定商取引法に基づく表示の作り方

この記事では、弁護士が、一般的な特定商取引法に基づく表示の作り方を解説します。

特定商取引法に基づく表示を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

特定商取引法に基づく表示とは

特定商取引法に基づく表示(以下「特商法表示」といいます。)とは、ネット販売(通信販売)にあたり、事前に顧客に明示しなければいけない事項を列挙したものです。

EC・ネットショップを提供する方はもちろん、インターネット上で消費者向けに何らかのサービスを有償販売する事業者の方は、等しく整備する必要がある大切な法律文書です。

特商法表示は、利用規約やプライバシーポリシーのなかに紛れ込ませたり、決済画面などで簡易的に表示することもできますが、顧客の利便性や説明責任の観点でも、「特定商取引法に基づく表示」というページを作成して、フッターに常時表示するのが一般的です。

ここではそのような形態で作成する特商法表示をご紹介します。

特定商取引法に基づく表示の記載事項

特商法表示に書かなければいけないことは、次のとおりです。

特定商取引法
(通信販売についての広告)
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は・・・(中略)・・・主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。(以下本文略)
一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)
二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
四 商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。)
五 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

「主務省令で定める事項」は以下のとおりです。

特定商取引に関する法律施行規則
(通信販売についての広告)
第八条 法第十一条第五号の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
二 販売業者又は役務提供事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者又は役務提供事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
三 申込みの有効期限があるときは、その期限
四 法第十一条第一号に定める金銭以外に購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭があるときは、その内容及びその額
五 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
六 磁気的方法又は光学的方法によりプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)を記録した物を販売する場合、又は電子計算機を使用する方法により映画、演劇、音楽、スポーツ、写真若しくは絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞させ、若しくは観覧させる役務を提供する場合、若しくはプログラムを電子計算機に備えられたファイルに記録し、若しくは記録させる役務を提供する場合には、当該商品又は役務を利用するために必要な電子計算機の仕様及び性能その他の必要な条件
七 商品の売買契約を二回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件
八 前四号に掲げるもののほか商品の販売数量の制限その他の特別の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件があるときは、その内容
九 広告の表示事項の一部を表示しない場合であつて、法第十一条ただし書の書面又は電磁的記録を請求した者に当該書面又は電磁的記録に係る金銭を負担させるときは、その額
十 通信販売電子メール広告(法第十二条の三第一項第一号の通信販売電子メール広告をいう。以下同じ。)をするときは、販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス

以上では、わかりにくいと思いますので、簡単にまとめると、次のとおりとなります。

①商品やサービスの価格、送料(法11条1号)
②対価の支払時期と支払方法(法11条2号)
③商品の引き渡し時期又はサービスの提供時期(法11条3号)
④返品ルール(法11条4号)
⑤事業者の氏名又は名称、住所、電話番号(施行規則8条1号)
⑥事業者が法人である場合は代表者名又は事業責任者名(施行規則8条2号)
⑦申込の有効期限(施行規則8条3号)
⑧対価や送料以外に購入者が負担する費用の有無内容(施行規則8条4号)
⑨契約不適合責任に関する特約の有無内容(施行規則8条5号)
⑩ソフトウェアの動作環境(施行規則8条6号)
⑪特別な販売条件の有無内容(施行規則8条7号)
⑫電子メールアドレス(施行規則8条9号)

以下では、これらの記載事項のうち代表的なものや問題になりやすいものについて個別に解説します。

個別の記載事項解説

商品の価格(法11条1号)

特商法表示には、ウェブサイト上で販売する商品やサービスの対価を記載しなければなりません(法11条1号)。

この点、ウェブサイト上で取り扱う商品やサービスが一つだけ、ということであれば、具体的な販売価格を特商法表示の中に記載することも検討できると思います。

しかしながら、多くのウェブサイトにおいて、販売する商品やサービスの種類は一種類だけではないと思います。

そのような場合は、「各商品・サービスのご購入ページに記載」などとして、特商法表示自体には具体的な金額を明記せずに、各商品、サービスの販売ページの記載に委ねる、ということで問題ありません。

送料(法11条1号)

送料についても同様です。取り扱う商品またはサービスが複数になる場合には、「各商品・サービスのご購入ページに記載」などとしておけば大丈夫です。

特商法を所管する消費者庁は、複数の商品を取り扱うウェブサイトにおける送料の表示について、次のように解説しています。

Q7 当社は取り扱っている商品の点数が多いのですが、送料については個々に表示する必要がありますか。
A7 一般に、送料は、商品の大きさ、重量、配達地域ごとに異なるため、最高と最低の表示、平均の表示、数例の表示等により消費者が自ら負担すべき送料についておよそ認識できるような分かりやすい表示となっていれば、個々の商品ごとに送料が表示されていなくても構いません。

(消費者庁「通信販売広告Q&A」Q7)

ここでポイントは、「消費者が自ら負担すべき送料についておよそ認識できる」状態にしなければならないということです。

「送料は実費とします」といった抽象的な記載では、具体的にいくらの送料を消費者が負担することになるのか、認識できません。そのため、このような抽象的な記載では、特商法の要請を満たしたものとはいえないと考えられます。

できる限り、具体的な送料の金額またはその計算方法を、個々の商品ページに掲載するようにしましょう。

それ以外に必要となる費用(法11条5号、規則8条4号)

特商法表示には、商品またはサービスの対価及び送料以外に必要となる費用がある場合にはこれを明記しなければなりません。

たとえば代引手数料や梱包料を買主に負担させるのであれば、その旨を明記する必要があります。

これについても、消費者庁が次のような見解を明示しています。

Q8 「代金引換手数料、梱包料がかかります」というような記載は可能ですか。
A8 金額を明示することが必要です。梱包料や代金引換手数料は、事業者が設定した金銭を消費者に負担させるものであり、具体的に金額を記載しない場合には、あらかじめ消費者側でいくらになるのか予測することができないので、金額まで記載することが必要です。

(消費者庁「通信販売広告Q&A」Q8)

これについても送料と同じで、具体的にいくらを負担することになるのか、消費者の方で認識できるような表示になっていなければならないということです。「代引き手数料がかかります」「梱包料がかかります」といった抽象的な表示では、特商法表示としては有効ではなくなるおそれがあります。

引渡時期(法11条3号)

この項目が特に重要になるのは、有形の商品(食べ物や衣類、機械など)をECサイトで販売する場合です。

「着金確認後◯日以内にお届け」といった形で、引渡の期間や期限をはっきりと明示する必要はあるのでしょうか。
これについて、特商法を所管する消費者庁は次のように解説しています。

Q9引渡時期については、どのように表示すればよいですか。
A9引渡時期は、期間又は期限というかたちで明確に表示する必要があります。例えば、「○○日以内」、「○月○日まで」というように表示してください。「直ちに」や「即時」といった期間をおかずに引き渡すことを意味する表現も、消費者の元への商品が届く時期は明らかになっていると考えられるので、引渡時期の表示として可能です。

(消費者庁「通信販売広告Q&A」)

すなわち、日数まで明示する必要はなく、「直ちに」「即時に」といった表現でも、消費者に誤解が生じることが少ないので、許容されるということです。

では、供給が追いつかないような人気商品の場合、「入荷次第発送する」という表現は法律上大丈夫でしょうか。

消費者庁は、次のように解説しています。

Q10「在庫のあるもの即日発送、予約は入荷次第」という記載があった場合には、引渡時期についての記載があると考えてよいでしょうか。
A10商品の引渡時期は、期間又は期限というかたちで表示することとされており、「入荷次第」という文言では時期を示したことにはなりません。これは、消費者が申し込んだ後、いつ商品を受領するか分からないと、消費者が不安定な状態におかれることとなるためです。「○○日以内」、「○○月○○日まで」という具体的な表示が必要です。

(消費者庁「通信販売広告Q&A」Q10)

「入荷次第発送する」ではダメということですね。

通信販売(EC)は、クリックするだけで簡単に商品を買えてしまうので、いつ届くのかはっきりしない形での販売は許さない、ということです。

では、「入金確認後発送する」はOKでしょうか?

消費者庁は次のとおり解説しています。

Q11 「入金確認後発送します」という表示は、支払い時期、商品の引渡時期を記載していると言えますか。
A11 代金の支払時期については、前払いであることが推測できますが、商品の引渡時期については、期間又は期限というかたちで表示することが必要であり、お問合せのケースでは、引渡時期を明示しているとはいえません。「入金確認後、直ちにお届け」という表示の場合には、商品の引渡時期が記載されているものといえます。

(消費者庁「通信販売広告Q&A」Q11)

入金確認後「直ちに」発送する、であればOKだが、「入金確認後発送する」だけではいつ頃の発送になるのか消費者側で推測することができないので、NGということです。

細かな表現の違いではありますが、「自分がこのECサイトを使って商品を購入する側であれば素朴にどう感じるだろうか?(理解できるだろうか?)」という観点から、思い当たるところがある方は、表現を見直してみるのが有益かと思います。

なお、アプリ内の課金アイテムなどの無形の商品やサービスは、基本的に支払と同時にユーザーに提供されることになると思いますので、この項目はあまり重要ではありません(「決済後直ちにご利用頂けます。」などと記載すればよいでしょう。)。

返品に関する定め(法11条4号)

インターネットで検索すると、ECサイトで販売した商品についてはクーリング・オフができないといった記事がたくさん出てくると思います。

これは、たしかに正しいのですが、その意味内容は正確に理解する必要があります。

たしかに、ECサイトで商品を販売した場合(特商法上は、「通信販売」と呼んでいます。)、特商法上のクーリング・オフの条文は適用されません(特商法第9条参照)。

その代わりに、ECでは、「法定返品権」という制度が定められています(特商法15条の3第1項)。

(通信販売における契約の解除等)
第十五条の三 通信販売をする場合の商品・・・の販売条件について広告をした販売業者が当該商品・・・の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者・・・は、その売買契約に係る商品の引渡し・・・を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除・・・(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。

法定返品権は、クーリング・オフとよく似ていますが、重要な点で違いがあります。

まずは、「商品」には適用されるが「サービス」には適用されないということです。たとえば、アプリ内で販売した有料アイテムなどについては、法定返品権はそもそも認められません。

次に、「特約で排除できる」ことです。これが重要です。

クーリング・オフは、業者が適用を排除すると宣言したとしても、無効です(こういったルールのことを、法律上、「強行規定」と呼んだりします。)
対する法定返品権は、契約で、法定返品権のルールは適用しないと宣言すれば、適用を除外することができます(特商法15条の3第1項但し書き)。

(通信販売における契約の解除等)
第十五条の三 (前略)・・・ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合・・・には、この限りでない。

そこで登場するのが、特商法表示の返品に関する記載です。

法定返品権を認めたくなければ、特商法表示に、「お客様都合によるキャンセル・返品は認めない」と記載しておけばよいのです。

もちろん、返品ルールの入力項目で、異なる表現を入力した場合は、そちらが優先して出力されます。

法定返品権を排除することはできると知りつつも、消費者のニーズにあわせて、一定の返品を認めることも、もちろん検討に値します。

なお、法定返品権についてはこちらの記事もご参照ください。

あわせて読みたい
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問い合わせ先(施行規則8条1号)

特商法表示には、事業者のお問い合わせ先として、

  • 販売事業者の氏名または名称
  • 住所
  • 電話番号

を記載しなければなりません。

さらに、販売事業者が法人である場合には、法人名のほかに、

  • 販売責任者の氏名

も必要になります。

販売事業者が法人ではなく個人事業主の場合は、個人事業主の氏名と別に販売責任者の氏名を記載する必要はありません(両者が同一人物であることが大半かと思われます。以上について、特商法11条5号、特商法施行規則8条1号2号)。

(通信販売についての広告)
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。(以下本文略)
一〜四(略)
五 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

施行規則
(通信販売についての広告)
第八条 法第十一条第五号の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
二 販売業者又は役務提供事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者又は役務提供事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
三以下略

氏名の記載(施行規則8条1号)

このお問い合わせ先の書き方については、個人事業主の方から、屋号やニックネーム、旧姓、通称でもよいか?という質問を受けることがあります。

特定商取引法に基づく表示に記載する氏名は、正確に戸籍上の氏名を正確に記載する必要があります(消費者庁「通信販売広告Q&A」16参照)。

ここで、個人事業主の方からよくある質問が、「実名さらしたくない。」というものです。

実は、これは可能です。

どうするかといいますと、「ユーザーから問い合わせがあった場合はすみやかに開示する」としておき、実際に氏名を開示するよう求められた場合に、すみやかに、問い合わせをしてきたユーザーにメールで氏名を開示すればよいのです。

(通信販売についての広告)
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、・・・(中略)・・・これらの事項を記録した電磁的記録・・・(中略)・・・を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。

施行規則
第十条 2 購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭の全部を表示する場合は、法第十一条第二号から第五号までに定める事項・・・(中略)・・・の一部を表示しないことができる。

具体的には、特商法表示に、お問合せ先としてメールアドレスまたはお問い合わせフォームを掲載しておき、ここから事業者の氏名の開示の問い合わせがあった場合にすみやかに返信をして氏名を開示する、という対応ができればよいということになります。

住所、電話番号(施行規則8条1号)

これもよくある質問ですが、上記の氏名と同じ取り扱いになります。

すなわち、上記の氏名の場合と同様に、遅滞なくメールで開示する取扱にしておけば、記載しないことが可能です。

とくに昨今は、「電話」のもつ重要性が相対的に低下し、固定電話の連絡先をもたないECサイトも増えてきました。中には一切の電話番号の表示がないサイトも頻繁に見受けられます。

さらにテレワークの広まりにより、オフィスを持たない(バーチャルオフィス)事業者も増えてきました。住所のもつ価値も、事業者によってはかなり変わってきています。

なお、氏名とは異なり、住所については、必ずしも住民票上の住所である必要はありませんが、実際に事業活動を行っている住所を記載する必要があります。たとえば自宅と事務所が別々の場所にあり、仕事はもっぱら事務所住所で行っているということであれば、特商法表示には事務所の住所を記載することになります。

特定商取引法に基づく表示を作成するときに気をつけること

以上、特定商取引法に基づく表示を作成するときに気をつけるべきことは

  • 商品の価格
  • 送料
  • それ以外の費用の記載
  • 引渡時期
  • 返品に関する定め
  • 問い合わせ先

です。

なお、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク) を使えば、特定商取引法に基づく表示を数分程度で作成することができますので、是非利用してみてください。

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