「うちで2,000円で売ってたTシャツがメルカリで3,000円で売られてる?!」
副業ブームの中増えている「せどり」(商品の転売)。
ご自身のEC・ネットショップで売られている商品がせどりに使われている場合、何らかの法的な対応を検討することはできるのでしょうか?
弁護士が解説します。
せどりは原則、違法ではない
せどり(転売)は、きわめて古典的なビジネスの方法です。
ある場所で1,000円で売られているものを、その需要がより高い場所に持っていって2,000円で売る。これは、せどりに勤しむ個人のみならず、大手商社などの大企業であっても、本質的にやっていることは同じです。
当然、そのような通常のビジネス行為は合法であり、大企業と個人事業主で規模は異なるとはいえ、せどりは原則として、違法ではありません。
ただし、中古品の販売を業として行う場合は、古物販売の許可が必要になります。また、チケットに関してはチケット不正転売禁止法という特別な法律で転売が規制されています。酒やタバコなど、そもそも販売に許認可が必要な商品は当然せどりをする人自身が許認可を取得する必要があります。
商品の販売はお断りしてもよい
せどりをする人(買主)にせどりをする自由があるのと同様、ショップ側(売主)にも、せどりをする人に商品を売るか売らないかを決める自由があります。
これを「契約自由の原則」といいます。
契約は、「買いたい!」という意思表示(申込み)と「売ります!」という意思表示(承諾)があって、初めて成立します。せどりをするような人には商品を売りたくないと思うのであれば、せどりをする人からの申込みに対して承諾をしなければよいのです。
ところが、ネットショップではひとつ困った問題があります。
それは、何の手当もしなければ、「注文ボタンを押した瞬間に売買契約が成立してしまう」ことです。
特にクレジットカード決済を前提とするネットショップにおいては、注文ボタンを押した時点ですでに決済も完了しているため、売買契約の成立は注文ボタンを押した時と評価される可能性が十分にあります。
そこで、他の記事でも紹介したように、売買契約の成立時期を後ろにずらすことで、対応することが考えられます。
具体的には、「商品を発送した時点で売買契約が成立する」などと利用規約や特定商取引法に基づく表示の中に明記しておくことになります。
また、「転売目的であることが伺われる場合」などを、商品の購入申込みを断る場合として列挙しておくことは、顧客の納得を得る一つの手段となるでしょう。
利用規約で更なる対応はできるが…
さらに、利用規約上で転売を禁止し、転売行為があった場合にはアカウントを削除する、退会させるといったことを明示することも、不可能ではありません。
しかしながら、そもそも転売行為それ自体は違法行為ではなく、一般的なビジネス行為であることから、あまりにも過剰な対策をとった場合、顧客のショップに対する評価、信用に影響を及ぼす可能性があります。
売買契約の申込みを拒絶する以上の対策を講じるか否かは、以上の観点も踏まえて慎重に決定する必要があります。
なお、業としてせどりを行っている人が古物商免許をとらずにせどり行為を繰り返す場合は、一般的な利用規約の禁止事項に含まれている「法令に違反する行為」に該当するとしてアカウントの削除、退会などの措置をとることが考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分のショップがせどりに利用され、せどりが成立しているということは、現在設定している販売価格の見直しや広告宣伝方法の変更などを考える、何らかのビジネス上のフラグかもしれません。
他方で、そのような側面を踏まえた上で、転売行為に対処したいということであれば、まずは売買契約の申込みを拒絶する仕組みを利用規約の整備などを通して検討しましょう。