弁護士が教えるコンサルティング契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的なコンサルティング契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

コンサルティング契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

コンサルティング契約書とは

各条項の解説をする前に、そもそもコンサルティング契約書とはどのような役割をする契約書なのでしょうか。

コンサルティングという言葉は、様々なビジネスシーンで、さまざまな意味で使われています。

経営コンサル、ブランディングコンサル、教育コンサル、、、あげればキリがありません。

そのため、単純にコンサルを依頼する、依頼させる、それに対して報酬を決める、というだけだと、具体的にどのような業務を受任しているのか、不明瞭になってしまうことがあります。

たとえば経営コンサルであれば、面談の回数や、面談の方法(面談はオンラインで行うのか、オフラインなのかなど)、成果物提供の有無などを具体的に定めておくことで、紛争を予防することができます。

そのため、コンサルティング契約にあたっては、必ず契約書を準備するようにしましょう。

各条項の解説

委託するコンサルティング業務の特定

まず、委託するコンサルティング業務の内容をできるかぎり特定しましょう。

どの程度の工数を依頼することになるのか、面談の回数、面談の方法、成果物の有無など、しっかりと協議をして内容を確定させていきましょう。

複雑な内容になる場合は、業務内容についての仕様書を作成し、これを別紙として添付し特定することも有用です。

第1条(目的)
甲は、下記のコンサルティング業務(以下「本件業務」という。)を、乙に委託し、乙はこれを受託する。
      記
一 経営指導(月1回以上の面談。面談はオンラインを基本とし、甲乙が合意した場合は適宜オフラインでも実施する。)

二 経営レポートの提出(四半期に1回)

三 (以下略)

報酬

コンサルティング業務の報酬を契約上特定しましょう。月次の契約であれば、月にいくらなのか、その支払いサイクルはどのようになるのか、振込手数料はどちらが負担するのかといったことを明示しましょう。税別税込についても争いになることがあるので明示するようにしましょう。

また、報酬の他に、必要経費を支出する場合には、どのようなルールに基づいてどのような経費の負担を認めるのかについても明示しておくと安心です。たとえば遠方からオフラインで打ち合わせをする場合の交通費や宿泊費を誰がどのように負担するのか、郵送に必要な費用は報酬とは別になるのか、などといったことが考えられます。原則として費用負担を認めない場合は、以下の条項のように、事前に承認があったものに限り認めるといった規定にすることが考えられます。

第○条(業務委託料及び費用)
1 甲は、乙に対し、毎月末日限り、本件業務に関する対価として下記の金額を乙の指定する銀行口座に振り込んで支払うものとする。ただし、振込手数料は甲の負担とする。
      記
月額○万円(税込)
2 甲は、乙に対し、前項の業務委託料とは別に乙が本件業務を実施するために要する費用について、事前に甲の承認があったものに限り、乙からの請求に基づき支払わなければならない。

成果物の権利帰属

レポートなどの成果物を提出する場合には、その著作権がだれに帰属するのかといったことについても定めておくと安心です。

ここでは依頼者に著作権が帰属するというパターンの条項例をご紹介します。

第○条(成果物の権利の帰属)
1 本件業務において、乙が作成又は提供する資料、報告書、その他の情報(以下これらを総称して「成果物」という。)に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に基づく権利を含む。)その他の知的財産権は本件業務実施前から甲に帰属するものを除き、全て乙から甲に無償で譲渡するものとする。
2 乙は、成果物に関する著作者人格権を行使しないものとする。

再委託

コンサルティングについては、属人的な要素が強いことから、再委託については原則として禁止するケースが多いです。

他方で、案件の内容によっては、再委託に馴染むものもあるかと思いますので、そのような場合は依頼者の事前の承認によって再委託可能であるといった文言に調整するのがよいでしょう。

ここでは原則禁止の場合の条項を紹介します。

第○条(再委託の禁止)
乙は、本件業務を第三者に委託し、又は請け負わせてはならない。

競業避止義務

特にノウハウや知財を扱うコンサルの場合は、類似の業務を競業他社に対して提供されると困ることがあるかと思います。

そのような場合には、類似するコンサル契約を競業他社との間で締結してはいけないという競業避止義務を設定することが考えられます。

ただし契約期間終了後も競業避止義務が永続するといった内容にすると、職業選択の自由を侵害し違法となる可能性があるので、契約終了後に競業避止義務を継続させる場合でも、1〜2年といった期間に留めておくのが過去の裁判例に照らすと無難です。

なお、一般的な秘密保持義務についても当然規定するようにしましょう。

第○条(競業制限)
乙は、本契約期間中、事前に甲の書面による承諾なくして、甲の同業他社に対して、本件業務と同様又は類似する業務を提供してはならない。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、左リンク先の記事を参考にしてください。

コンサルティング契約書を作成するときに気をつけること

以上、コンサルティング契約書を作成するときに気をつけるべきことは、

  • 委託するコンサルティング業務の特定
  • 報酬の定め
  • 成果物の権利帰属
  • 再委託を許すか
  • 競業避止義務の有無

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 中島和也先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用したコンサルティング契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次