この記事では、弁護士が、一般的なデータベース使用許諾契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。
データベース使用許諾契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。
データベース使用許諾契約書とは
一方が構築した顧客データベースに対するアクセスを、他社に対して有償/無償で許諾する内容の契約書です。
データベース使用許諾契約書を締結することで、データベースを提供する側からすれば、利用の対価や利用期間、禁止事項などを明確にすることができます。
データベースに対するアクセスを許諾される側からすれば、どこまでの範囲で利用が可能なのか、データベースの内容に誤りがあった場合にどうなるのかといったことを明確にすることができます。
各条項の解説
データベースの特定
はじめに、どのようなデータベースへのアクセスを許すのか、具体的なデータベースの内容を特定します。
URLなどによって特定することも可能です。
以下では簡易的な記載を紹介します。
第○条(定義)
本契約において、次の用語は次の意味を有するものとする。
(1)「本件データベース」とは、下記の事柄に関するデータの集合であり、甲により検索可能な状態に編集されたものをいう。
記
○○
(2)「本件プログラム」とは、本件データベースを使用するために作成されたコンピュータプログラムをいう。
使用許諾
どのような範囲で、どのような態様での使用を許諾するのかを明確に記載します。
物理ハードディスクに複製することを許諾する場合は、その台数や範囲についても特定します。
また、クラウド上のデータベースにアクセスを許す場合には、リバースエンジニアリング等を禁止します。
第○条(使用許諾)
1 甲は、乙に対し、本契約に定める条件にて本件データベースを使用することを、非独占的に許諾する。
2 甲は、乙に対し、本件データベースを使用するために、本件プログラムを使用することを非独占的に許諾する。
3 乙は、本件プログラム以外を用いて本件データベースを使用し、又は不正の手段を用いて本件データベースにアクセスしてはならない。
4 乙は、本件プログラムを、乙が事業所内に有するコンピュータ1台に複製した上で、甲が管理するサーバーに保管された本件データベースにインターネット通信回線を通じてアクセスし、使用することができる。
5 乙は、本件データベース及び本件プログラムを、逆コンパイル、逆アセンブルその他リバースエンジニアリングの手法を用いて解析し、又は複製、公衆送信等してはならない。(以下略)
使用料金
データベースの使用料金を、料金体系とともに明記します。
月額課金とする場合は、初期費用(イニシャルコスト)の設定等についても検討します。
支払いサイクル、支払期日についても明示します。
第○条(使用料)
1 乙は、甲に対し、本件データベース及び本件プログラムの使用の対価として、次に定める使用料を振り込んで支払うものとする。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
記
初期費用
ア 金額
○○
イ 支払時期
○○
月額費用
ア 金額
○○
イ 支払時期
○○
2 本契約に基づき乙から甲に支払われた対価は、いかなる事由による場合でも返還されないものとする。
権利帰属
データベースの著作権等がデータベース提供者に帰属することを明示します。
データベースを利用して生成されたアウトプットの権利帰属については、契約の趣旨目的に照らして、提供者帰属とすることも、利用者帰属とすることも検討できます。
第○条(著作権その他の知的財産権の帰属)
本件データベース及び本件プログラムの著作権その他の知的財産権は、全て甲に帰属する。
保証の否認
データベースの性質上、その内容が完全であることや誤りがないことについて保証をすることが相当ではない場合は多くあります。
そのような場合には、データベースの内容の正確性等について保証しないことを契約上明示する必要があります。
内容について保証する場合でも、どこまでの範囲で、どの項目についての保証とするのか、慎重な線引きが必要です。
第○条(保証)
1 甲は、本件データベース及び本件プログラムについて、適正な保守管理を行うものとし、本件データベースを構成するデータが最新の状態に保たれるよう最大限の努力を行う。
2 甲は、本件データベースを構成するデータの正確性、完全性又は特定の目的に関する適合性については一切保証しない。
3 甲は、本件データベース又は本件ソフトウェアの使用により、乙又は第三者に損害が生じても、第8条に規定する場合を除き、かかる損害の賠償その他一切の責任を負わない。
一般条項
以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。
一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。
データベース使用許諾契約書を作成するときに気をつけること
以上、データベース使用許諾契約書を作成するときに気をつけるべきことは
- データベースの特定
- 使用許諾
- 料金体系
- 権利帰属
- 保証の否認
です。
なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉田尚平先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用したデータベース使用許諾契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。