弁護士が教える機械設備保守契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的な機械設備保守契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

機械設備保守契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

機械設備保守契約書とは

各条項の解説をする前に、そもそも機械設備保守契約書とはどのような役割をする契約書なのでしょうか。

業務用のプリンターや大型のOA機器、AV機器など、個人ではメンテナンスが難しく、定期的にプロの業者にメンテナンスをしてもらうことに合理性のある機械設備を導入する場合、導入と合わせて機械設備保守契約書を締結することがよくあります。

保守契約を締結しておかないと、ベンダーに、どのような場合に、いくらの費用で、どこまでの対応をしてもらえるのかが不明瞭になってしまい、毎回問い合わせと見積もり、場合によっては業者選定から始まることになってしまいます。

その意味で、機械設備保守契約は、導入企業、ベンダー、双方にとって事前に締結しておくことが有用な契約ということができます。

各条項の解説

保守業務を委託する対象設備の特定

まず、保守業務を委託する対象設備が具体的に何なのか、特定するところから始めましょう。

「委託者の事務所内にある機械設備」など漠然とした決め方をしてしまうと、何が委託の対象なのかが曖昧になり、トラブルの元凶となるので、できる限り型番レベルで特定するようにしましょう。型番が存在しない一点ものなどの場合には、写真を添付するといった方法も有用です。

第○条(目的)
甲は、本契約の定めに従い、下記の機械設備(以下「本件機械」という。)の保守を乙に委託し、乙はこれを引き受ける。
      記
〇〇製20XX年式業務用プリンター 形式XX-XXXXX  1台

委託する保守業務の特定

次に、委託する保守業務が具体的にどのようなものか、できる限り特定しましょう。

定期的な点検が必要な機械設備の場合は、点検の頻度や方法を明示します。

定期的な訪問まで不要な場合には、どのような場合に、どこまでの対応を依頼することができるのか、どこからが保守契約の費用範囲内で、どこからが範囲外となるのかをできる限り具体的に明示するようにしましょう。

内容があまりにも詳細多岐にわたる場合には、「別紙のとおり」として業務内容を別紙に羅列することも有用です。

第○条(保守内容)
乙は、本契約に基づき、保守サービスとして以下の業務を行う。
(1)定期点検業務
本件機械の耐久性の維持及び良好な状態での使用のため、月○回の点検、機械の清掃、調整、及び部品の交換等を行う。
(2)出張補修業務
本契約期間中に通常の使用により本件機械の故障が生じた場合に部品の交換、補修等を行うものとする。

(以下略)

除外業務の特定

これは保守事業者側にとって特に重要な条項です。

先ほどの保守業務の特定の裏返しになりますが、保守業務には「含まれない」業務を明示することが、保守事業者にとってのリスクヘッジにつながります。

第○条(保守除外業務)
次の各号に該当するものは、本契約の保守内容に含まれず、別途甲乙間において実施時期及び料金等を定めた有償の契約によるものとする。
(1)機械全部の分解及び組立てを要する作業
(2)甲の使用方法の誤り等甲の責に帰すべき事由に起因する機械損傷の修復作業
(3)機械の改造又は他の機械製品及び付属品の設置に伴う作業
(以下略)

料金の支払い

保守業務の報酬を契約上特定しましょう。月次の契約であれば、月にいくらなのか、その支払いサイクルはどのようになるのか、振込手数料はどちらが負担するのかといったことを明示しましょう。税別税込についても争いになることがあるので明示するようにしましょう。

第4条(保守料金の支払)
甲は、乙に対し、毎月末日限り下記の保守費用を乙の指定する銀行口座に振り込んで支払うものとする。ただし、振込手数料は甲の負担とする。
      記
xxx

費用負担

必要経費を支出する場合には、どのようなルールに基づいてどのような経費の負担を認めるのかについても明示しておくと安心です。たとえば遠方から出張訪問をする場合の交通費や宿泊費を誰がどのように負担するのかなどといったことが考えられます。原則として費用負担を認めない場合は、以下の条項のように、事前に承認があったものに限り認めるといった規定にすることが考えられます。

第○条(費用負担)
第○条の保守サービスに要する費用のうち、以下のものについては甲の負担とする。
(1)・・・

再委託

保守業務の再委託を許すかどうかについても明示するようにしましょう。

特に専門的な知見が必要となる業務に関しては、委託者の立場としては再委託を許さないことを原則とし、事前に承認がある場合に限って第三者への委託を許すという内容にすることが考えられます。

第○条(再委託)
乙は、甲による事前の書面による承諾なく、第三者に対し、保守サービス業務の全部又は一部を第三者に対し委託することはできない。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、左リンク先の記事を参考にしてください。

機械設備保守契約を作成するときに気をつけること

以上、機械設備保守契約を作成するときに気をつけるべきことは

  • 対象設備の特定
  • 保守業務の特定
  • 除外業務の特定
  • 料金の支払い
  • 費用負担
  • 再委託

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 三島大樹先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した機械設備保守契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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