弁護士が教える個人情報保護に関する誓約書(従業員向け)の作り方

この記事では、弁護士が、従業員から入社時に会社に提出させる、個人情報保護に関する誓約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

個人情報保護に関する誓約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

目次

個人情報保護に関する誓約書とは

個人情報保護法の改正により、いまでは事実上すべての企業(中小企業含む)が個人情報保護法の適用を受けることになっています。

個人情報保護法に基づく各種の義務は、個人情報を取り扱う企業に課されることは一般人の感覚からも当然と思われますが、当該企業に勤務する従業員個々人にも適用されるのでしょうか。

たとえば、従業員がお客様の個人情報が含まれる情報を大量に漏洩したり、名簿業者に販売した場合、当該従業員は個人情報保護法によって罰せられるのでしょうか。

答えは「YES」です。

個人情報保護法

第百七十九条 個人情報取扱事業者(その者が法人・・・である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等・・・を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

企業から当該従業員に対して損害賠償請求などの法的責任を追及することも可能です。

ただし、これらの「法的な常識」については、常識として理解している人もいれば、同様の理解を持っていない人も一定数存在すると思われます。

さらに、責任を追及できる法的根拠について理解している人は殆どいないでしょう。

そのため、法律に明記されている内容ではあるものの、入社時に、お客様の個人情報の取り扱いについて誓約書を提出させておくことで、従業員に個人情報取り扱い時の責任を自覚させるという効果が期待できます。

そのため、多くの企業で、個人情報保護に関する誓約書を、入社時に提出させています。

各条項の解説

誓約書とするか、契約書にするか

はじめに形式的な論点ですが、本文書を誓約書にするか、契約書にするか、という問題があります。

誓約書とは、一方から他方に対して差し入れをする文書です。差し入れる方が署名又は記名押印するだけで、受領する側は特に署名や記名押印を予定しないスタイルの文書です。

これに対して契約書は、両当事者が署名又は記名押印をするスタイルの文書です。一般的な法律文書の多くは記名押印スタイルをとっています。

今回の内容については、従業員が遵守すべき義務を記載しているだけで、企業側の義務を何らか設定するものではないため、従業員から会社に対して一方的に差し入れる誓約書とすることが簡便で良いでしょう。

なお、雇用契約書の中に、個人情報の保護に関する事項を記載することも可能です。この場合は契約書スタイルになります。

以下の記事では雇用契約書と別途誓約書を差し入れさせるスタイルの文例を紹介します。

個人情報の保護に関する誓約

はじめに、当然の内容ではありますが、会社で取り扱う個人情報について、漏洩などしないことを誓約させます。「個人情報」の範囲については、さまざまな定義が可能ですが、一般的には、個人情報保護法における個人情報の定義と同旨としておくことで足りるでしょう。

第○条(個人情報の保護)
私は、個人情報の保護に関する法律その他の関連法令、貴社就業規則、個人情報保護規程等を遵守し、貴社が取り扱う個人情報につき、適正に取り扱うとともに、在職中及び退職後において、業務上認められた範囲を超えて開示、漏洩をせず、また開示、漏洩につながる一切の行為を行わないことを誓約いたします。

損害賠償の負担

万が一個人情報漏洩事故を起こした場合にどのような責任が発生するかを明記しましょう。

上記のとおり、誓約書がなくても、法的には、損害賠償責任等を追及することは可能です。

しかし、これを誓約書に明記しておくことで、万が一のトラブルがあった場合に従業員が誓約書に記載された責任を負うことについての自覚が容易になります。

具体的には、賠償責任のほかに、就業規則に基づく懲戒処分等の対象になることも明記しておくと安心です。

第○条(損害賠償の負担)
第○条の誓約事項に違反し、個人情報が漏洩することとなった場合、法的な責任を負担するものであることを確認し、貴社就業規則に従った懲戒処分を受けることに異議はなく、貴社に損害が発生した場合は、貴社が被った一切の損害を賠償いたします。

個人情報保護に関する誓約書を作成するときに気をつけること

以上、個人情報保護に関する誓約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • 誓約書とするか、契約書にするか
  • 個人情報保護の誓約
  • 違反があった場合の損害賠償等の負担

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉本侑生先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した個人情報保護に関する誓約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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