弁護士が教える人材紹介契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的な人材紹介契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

人材紹介契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

人材紹介契約書とは

人材紹介業は、職業安定法に基づく有料職業紹介の免許を保有する事業者が、クライアントに人材紹介を行い、手数料報酬を得るにあたり、クライアントとの間で締結する契約書です。

どのような場合に報酬が発生するのか、報酬はいくらになるのか、紹介した人材がすぐに退職してしまった場合に返金が発生するのか、一度紹介を受けた人材を直接採用した場合にどのようなペナルティが発生するのかなど、人材紹介業界で頻出する論点を網羅するように、契約書を整備しましょう。

各条項の解説

重複応募や直接連絡への対処

人材紹介ビジネスで頻出の論点が、「ほかの有料職業紹介業者から同じ人を紹介された」「自社の求人ページから直接同じ人が応募してきた」といった場合に、紹介手数料が発生するのかどうかという点です。

多くの事業者が、単一の職業紹介事業者ではなく、複数の職業紹介事業者を並行して利用するため、このような論点は人材紹介業界では日常茶飯事のように発生します。

そこで、一般的な有料職業紹介の契約書では、一定の期間内に関しては、重複応募があった場合であっても、最初にタッチポイントになった紹介に基づいて、紹介手数料が発生するという形にしているケースが多いです。

この「一定の期間」をどの程度にするのかは、職業紹介事業者ごとにさまざまな考えがありますが、あまりにも長期間クライアントを拘束する内容だと、そもそもエージェントとして利用してもらえない(契約してもらえない)おそれがありますし、裁判所で公序良俗違反と判断されるおそれもあります。

ここでは「一定の期間」を1年とする場合の文例をご紹介します。

第○条(重複応募及び候補者への直接連絡)
1 甲は、乙が紹介した候補者について、既に別の手段により応募があった場合は、速やかにその旨を乙に通知する。原則として、過去1年以内に既に応募があった手段を優先するものとする。ただし、当該候補者がこれを望まない場合は候補者の意思を尊重する。
2 甲は、乙が候補者を紹介した後1年の間に、当該候補者について別の手段により応募があった場合は、速やかにその旨を乙に通知する。原則として、乙が候補者を紹介した日より1年の間は、乙の紹介による応募として取り扱う。
3 甲は、乙が候補者を紹介した日より1年の間は、当該候補者の選考が終了した後であっても、当該候補者と直接連絡を取る場合には事前に乙にその旨を通知する。

人材紹介手数料

人材紹介手数料は、通常、理論年収の○%といった形で規定されることが多いです。

ここでは二つ論点があり、ひとつは手数料の上限、もうひとつは理論年収の定義です。

手数料については、受付手数料、上限制手数料、届出制手数料の3種類が制度上準備されていますが、殆どの事業者が届出制手数料により理論年収の○%を報酬とするという届出を行なっています。ただしこの場合であっても、50%を超える高率の場合は届出が受け付けられないこととなっています。

つぎに、理論年収の定義については、法律で定めはないため、あくまでも契約書の中で各事業者が定義することになります。各種の手当類を理論年収に含めるのか、ボーナスはどのように考えるのかなど、細かく検討すべき論点です。

ここでは一般的な文例をご紹介します。

第○条(人材紹介手数料)
1 甲は、乙が紹介した候補者を採用し、入社に至った場合、人材紹介手数料として当該候補者の初年度の理論年収に対する下記の料率の金額を乙に支払う。
      記
理論年収の○%
2 理論年収とは、月額給与及び諸手当(想定される残業手当を含み、通勤手当、時間外、休日、深夜労働手当等の割増賃金を除くものとする。) の12か月分に理論上の通年個人業績賞与額を加えた合計額をいう。

報酬の支払い時期

人材紹介ビジネスのうち、特に中途採用市場をターゲットにするものについては、採用内定日が通年をとおしてバラバラになります。そのため、報酬の支払い期日がいつになるのかについては、契約書で明示しておくと安心です。

たとえば採用内定日から○日後、採用内定日が属する月の翌月○日限り、など、一定の定義が考えられます。

ここでは入社日から○日以内とする文例をご紹介します。

第8条(支払方法)
1 乙は、乙が紹介し甲が採用した候補者の入社日において人材紹介手数料が発生するものとし、甲に対して当該候補者の入社確認を行い、請求書を発行する。
2 甲は第7条の人材紹介手数料を下記の期日までに乙指定の銀行口座に振り込んで支払うものとする。なお、人材紹介手数料には消費税を加算し、振込手数料は甲の負担とする。
      記
当該候補者の入社日から○日以内

返金規定

マッチングがうまくいかず、紹介した人材が、入社後すぐに辞めてしまうというケースも人材紹介業界では頻繁に発生します。

ここで顧客との間で必ず発生するのが「紹介手数料を返せ」「紹介手数料を払わない」といったトラブルです。

このような事態に適切に対処できるよう、返金規定を設定しましょう。

法的には、一切返金を受け付けないという契約にすることも可能ですが、実務上は一定の期間ごとに一定の%で返金するといった形で契約交渉が着地することが多いです。

ここではそのような場合の文例をご紹介します。

第○条(返金)
1 乙が紹介した候補者が甲に入社後、候補者本人の責による解雇、又は候補者本人都合による退職に至った場合、乙は甲に対し、以下に定める期間に応じた割合に基づき第7条の定めにより乙に支払われた人材紹介手数料を返還する。
(1)入社後1か月以内の場合
人材紹介手数料の○%
(2)入社後1か月超3か月以内の場合
人材紹介手数料の○%
(3)入社後3か月超6か月以内の場合
人材紹介手数料の○%
2 前項の返還金について、乙は、甲が乙へ当該退職者が退職した旨を通知した日の翌月末までに甲指定の銀行口座に振り込んで支払うものとし、振込手数料は乙の負担とする。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。

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人材紹介契約書を作成するときに気をつけること

以上、人材紹介契約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • 重複応募や直接連絡への対処
  • 人材紹介手数料
  • 手数料の支払い時期
  • 返金規定

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 濱永健太先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した人材紹介契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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