弁護士が教える肖像権使用許諾契約書の作り方

この記事では、弁護士が、肖像権使用許諾契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

肖像権使用許諾契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

肖像権使用許諾契約書とは

肖像権とは、他人から無断で写真や動画を撮られたり、撮られた写真や動画が無断で公表されたり利用されたりすることがないように主張できる権利のことです。

たとえば街中でyoutube動画の撮影をして、そこに演者以外の第三者が大きく映り込んでいた場合、当該第三者にモザイク処理などをせずに動画を公開することは、当該第三者の肖像権侵害と評価される可能性があります。

また、たまたま映り込んだ場合ではなく、出演を依頼した場合であっても、何も契約書を締結していなければ、どこまでの肖像権利用を本人が依頼したのかについて不明確になってしまいます。

これらの場合に対応し、肖像権の使用についての許諾の有無、許諾の範囲を明確にするために、肖像権使用許諾契約書が作成されます。

各条項の解説

使用目的

まず、何のために肖像権を使用するのかを特定・明示しましょう。

たとえばyoutube動画であれば、当該youtube動画のタイトルやURLを特定して明記することが考えられます。

まだどのような媒体で使用するかはっきりしていない場合には、抽象的な記載もできますが(例、乙が制作する映像作品で使用するため)、あまりにも抽象的にすると、後日、肖像権の使用を許諾していないとの反論がなされる可能性があります。できる限り特定を心がけましょう。

第○条(使用許諾)
甲は、乙が下記1の写真、動画(音声を含む。以下同様とする。)を、下記2の範囲内で使用することを許諾する。
                記1
○○
                記2
使用目的
○○

使用料

肖像権の使用に関して、使用料を設定する場合には、その金額を記載しましょう。

ドキュメンタリーなどで出演を依頼する場合には、使用料を設定しないこともあるでしょう。

使用料を設定する場合には、その金額、支払期日、支払方法を特定しましょう。

第○条(使用料)
1 第○条の使用許諾の対価(許諾料)は、下記のとおり(消費税込み)とする。
                記
 ○○
2 乙は、前項の許諾料を、別途甲及び乙が合意する期日までに甲の指定する銀行口座に振込みにて支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする

権利の不行使

肖像権は、被写体となる特定の個人に専属する権利であり、他人に譲渡することはできません。

そのため、肖像権使用許諾契約書を作成したからといって、特定の個人の肖像権が許諾の相手に譲渡などされることはありません。

何も定めをおかなければ、承諾者は、肖像権の侵害を理由に、損害賠償請求や差止請求などをすることができてしまいます。

そこで、承諾者がこれらの権利行使をしないことを、契約書で明確に定めておきます。

第○条(権利の不行使)
1 甲は、乙が第○条の範囲で甲の写真、動画を使用する限りにおいて、肖像権、プライバシー権、パブリシティー権その他人格権の行使を行わない。
2 甲は、乙に対し、本契約に基づいて撮影を行った動画及び写真について、印刷物やデータ等の提供を求めることはできない。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。

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肖像権使用許諾契約書を作成するときに気をつけること

以上、肖像権使用許諾契約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • 使用目的の特定
  • 使用料の定め
  • 権利の不行使

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉本侑生先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した肖像権使用許諾契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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