KIYACを試すこの記事では、弁護士が、一般的な営業代理店の作り方をひな形条文つきで解説します。
営業代理店契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。
営業代理店契約とは
営業代理店契約ということば自体は法律上の用語ではなく、人によって様々な意味で使われています。
このブログでは、世の中にさまざま存在する営業代理店契約のうち、「代理店が契約の締結に関与せず、 顧客の紹介を行うだけの役割を担う」「代理店が行う業務はあくまで顧客を紹介するまでで、契約の締結の交渉や更なる商品説明についてはメーカー等が行う」場合ののひな形を解説します。
各条項を作るときのポイント
顧客に紹介する商品の特定
はじめに、営業代理店が顧客に営業する商品やサービスが何なのか、特定しましょう。
委託者が販売するありとあらゆる商品というケースもあれば、全商品のうち一部のみ、という場合もあるかと思います。
別紙などで指定すると便利です。
たとえば次のような条項が考えられます。
第○条（目的）
本契約は、甲が乙を、別紙記載の製品又はサービス製品（以下、「本製品」という）の地区営業代理店に指名するとともに、乙は甲の指名を引き受けて本製品の地区営業代理店となり、本契約に従い本製品の顧客を甲に紹介することを目的とする。
独占契約の有無、営業地区
営業代理店契約には、独占契約と非独占契約の別があります。
独占契約になると、特定の地域において、特定の商品の営業代理店はその一社しか設定されないことになります。
非独占契約になると、同じ地域の中で複数の営業代理店契約を締結することができることになります。
独占契約にするのか、しないのかについては、営業代理店契約の性格や、販売する商品の内容、販売戦略、地域特性など踏まえて、個別に決定することとなります。
なお、複数の営業代理店を設置する場合には、代理店ごとにどこまでを商圏とするか、営業地区を特定しておくことがあります。営業地区を特定しなければ、代理店同士が競合してしまうおそれがあるため、オフラインでの販売が中心になる商材であれば営業地区の設定を検討しましょう。他方でオンラインでの販売がメインになる商材であれば、あえて営業地区を設定しないケースもあります。
また、独占契約にする場合には、独占的な権利を営業代理店に与える代わりに、競合する商品の販売を行ってはならないという縛りを入れることがあります。
営業地域を特定し、独占契約とする場合は、たとえば次のような条項が考えられます。
第○条（営業地区）
乙は、甲が指定した○○の地域で独占的に本製品の顧客獲得のための営業活動を行うことができる。乙は、甲から書面による同意がされない限り営業地区外で一切の営業活動を行ってはならない。第○条（競業避止義務）
乙は、本契約期間中、本契約締結日時点において既に取り扱っている製品を除き、甲の承諾なく、競合する他社の製品を販売し、販売促進活動をしてはならない。
紹介者の免責
ほかの代理店契約と異なり、顧客を紹介するだけの営業代理店契約では、紹介した顧客とメーカーとの間でトラブルがあった場合にどのような責任を負うのか、という問題が浮上します。
このような場合でも代理店が一定の責任を負担するという契約もありますし、代理店は単に顧客を紹介しただけなので一切責任を負わないという契約もあります。
ここでは一切責任を負わずに免責されるというタイプの条項をご紹介します。
第○条（免責）
１ 甲と、乙が紹介した顧客との間に生じた本製品の瑕疵その他の契約上、取引上の問題、紛争等については、すべて甲が処理、解決するものとし、乙は何らの責任も負わないものとする。
２ 本製品の販売代金については顧客と契約関係にある甲が顧客から回収するものとし、乙は顧客から回収できなかった本製品の代金について一切責任を負わない。
一般条項
以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。
一般条項の具体的な内容については、左リンク先の記事を参考にしてください。
営業代理店契約を作成するときに気をつけること
以上、営業代理店契約を作るときに特に気をつけるべきことは、
- 営業代理店として顧客に紹介する商材の特定
- 独占契約の有無
- 営業地域を設定する場合はその特定
- 紹介手数料の設定
- 紹介者の免責
です。
なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形（ご提供：弁護士法人飛翔法律事務所 三島大樹先生）を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した営業代理店契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。