この記事では、弁護士が、サンプル品提供契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。
サンプル品提供契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。
サンプル品提供契約書とは
BtoBの取引のおいて、代理店契約や売買基本契約の締結に先立ち、商品のサンプルを相手方から提供してもらい、協業の検討をすることはよくあると思います。
このような場合に、サンプル品であっても、その中で相手方のノウハウや秘密情報が含まれていることがあります。
そこで、契約において、サンプル品の使用をどこまで許すのか、許さないのかといったことを明確に定めることになります。
また、サンプル品であっても、特に高額の商品の場合には、対価の支払いをすることもあります。この場合は、サンプル品提供とはいいつつも売買契約としての性質も併せ持つことになります。
各条項の解説
サンプル利用の目的
はじめに、提供する商品は、あくまでもサンプルであり、サンプル利用のみが目的であることを明示しましょう。
目的の明示がなければ、特に対価を設定した場合には、第三者の目からは、単純な売買契約と誤認されてしまう恐れがあります。
第○条(サンプル利用)
1 甲は、サンプル品を本件目的のためのサンプルとして利用する限度で入手するものであり、他の目的に用いてはならない。
2 本件商品及びサンプル品に関する知的財産権は乙に帰属するため、甲は、乙から提供を受けたサンプル品を利用して、乙の事前の書面による承諾なく知的財産権の取得をしてはならない。
開示制限
特にノウハウや秘密情報を多分に含むサンプル品の場合は、その取り扱いができる人間を制限するなどして具体的な開示制限を設けることがあります。
特に従業員数の多い企業に対してサンプル品を提供する場合には、担当者や、取り扱い部署、事業所所在地などを特定することもあります。
ここでは包括的な記載をした文例をご紹介します。
第○条(サンプルの開示制限)
甲は、善良なる管理者の注意をもってサンプル品の管理をしなければならず、第5条に定める秘密情報に接触できる役員、従業員を業務遂行のために必要な者に制限する。
遵守義務
上記の契約の趣旨目的にも関係することですが、あくまでもサンプル品としての提供であることから、その目的を超えた態様でサンプル品を利用しないように、禁止すべき事柄があれば個別具体的に列挙しておくのが安全です。
たとえば成分分析や解析行為を禁止するのであればその旨を明確に定めましょう。
第○条(遵守義務)
甲は、乙から提供されたサンプル品について、次の各号について遵守するものとする。
①成分解析・分析を行わない。
②乙提供の包装及び容器(サンプル品であるとの明記のある容器、その容器を入れた包装)以外へ移し替えない。
③本件目的のために使用し、残部があれば、乙に返還する。また、本契約の有効期間満了時に残部があれば、同じく乙に返還する。
契約不適合責任の排除
サンプル品であることから、万が一商品に不具合(契約不適合、瑕疵)があった場合であっても、これについては責任を負わないことを明示しておくのが安心です。
第○条(サンプル品としての了解事項)
甲は、本契約の対象となる本件商品のサンプル品が、あくまでサンプル品であることを理解し、品質不良等の不具合があった場合でも、代品提供の措置を行う以外は何らの契約不適合責任等を追及しないものとする。
一般条項
以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。
一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。
サンプル品提供契約書を作成するときに気をつけること
以上、サンプル品提供契約書を作成するときに気をつけるべきことは
- サンプル利用の目的
- 開示制限
- 遵守義務
です。
なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉田尚平先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用したサンプル品提供契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。