弁護士が教えるソフトウェア使用許諾契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的なソフトウェア使用許諾契約書(ダウンロード型)の作り方をひな形条文つきで解説します。

ソフトウェア使用許諾契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

ソフトウェア使用許諾契約書とは

現状、ソフトウェアの使用許諾については、①インターネット上やDVDディスクなどからダウンロードして使用する形態、②インターネット上でソフトウェアの利用環境を提供する形態の2種類が存在します。

本記事では①の場合の契約書のうち、いわゆるパッケージ販売されるソフトウェアではなく、顧客向けに一定程度カスタムメイドされた業務用のソフトウェアの使用許諾に関する契約書ひな形を解説します。

各条項の解説

使用許諾の範囲

どの範囲での使用を許諾するのか、具体的に記載しましょう。

業務用のソフトウェアであれば、ダウンロードするPCの所在場所や、型番まで特定することも考えられます。

また、複数回のダウンロードを許可する場合のは、その回数上限や期間などを設定します。

ダウンロードする端末を特定するだけではなく、ソフトウェアの利用者を具体的に特定することも考えられます。

第○条(使用許諾)
甲は、乙に対し、本契約に定める条件に従い、甲が著作権その他の知的財産権を保有する本件ソフトウェアの非独占的な使用を次のとおり乙に許諾する。
(1)許諾地域 日本国内
(2)許諾場所 乙の事業所内
(3)使用者 乙の役員及び従業員(派遣労働者等、乙の指揮命令により乙の業務に従事する者を含む。)

ソフトウェアの引渡し

どのような方法でソフトウェアを引き渡すのか、その具体的な態様を特定します。

後日顧客から、ソフトウェアの納品がなされていないというクレームが発生しないように、どのような媒体で納品するのか、納品の対象物は何かを具体的に記載します。

また、○日以内に検修する旨を記載することで、検修完了後は、基本的にはソフトウェアの中身に関してクレームが出せなくなります。

第○条(納入)
1 甲は、乙の指定する日に、下記物品を乙に引き渡すことにより、本ソフトウェアを納入する。
      記
本ソフトウェアを記録したCD-ROM1枚、仕様書、マニュアル一式
2 乙は、甲から本ソフトウェアの納入を受けた後、15日以内に本ソフトウェアが正常に動作するか否かを確認し、甲に書面にて報告する。
3 甲は、乙から本ソフトウェアに不具合があることの報告を前項の期間内に受けたときは、速やかに当該不具合を修正し、再度本ソフトウェアを乙に納入するものとする。
4 乙が第2項に基づき本ソフトウェアに不具合なきことを甲に報告したときは、その時点をもって本ソフトウェアの検収は完了したものとする。第2項に定める期間内に乙から甲に対する報告がなされなかったときも同様とする。

権利帰属

顧客向けにカスタマイズしたソフトウェアについては、顧客からその内容に関して著作権等の権利主張を受ける可能性があります。

これに備えて、ソフトウェアに関する権利が誰に帰属するのか明示するようにしましょう。

単に顧客が要件定義に一定程度参加した、顧客ヒアリングを実施しカスタマイズした、という程度では、顧客側に著作権が発生することは法的には考え難いので、基本的にはベンダー側に著作権その他の知的財産権が帰属するということで問題ありません。

第○条(権利の帰属)
甲は、本ソフトウェアに関する著作権その他一切の知的財産権を保有するものであり、本契約に基づく本ソフトウェアの使用許諾は、甲から乙に対し、本ソフトウェアに関する著作権その他の知的財産権を一切譲渡するものではない。

リバースエンジニアリングの禁止

特定の業種に特化したソフトウェアなどは、顧客が別の開発会社を利用して類似のソフトウェアを開発するよう企図することも考えられます。

このような場合に損害賠償請求や解除の主張ができるように、リバースエンジニアリング等を禁止する条項を設定しておきましょう。

第○条(制限)
乙は、甲の書面による承諾なき限り、本ソフトウェアを改変又は翻案し、もしくは逆コンパイル、逆アセンブルその他リバースエンジニアリングの手法を用いて本ソフトウェアを解析してはならない。

対価の支払い

ソフトウェア使用の対価とその支払時期、支払方法について明確に記載しましょう。

クラウド型であればサブスクリプション型とすることが昨今非常に増えていますが、パッケージ型で納品する場合には、買い切りとする場合もあるでしょう。法的にはいずれも問題ないので、自社の料金体系に整合する内容で整えましょう。

第○条(対価)
本ソフトウェアの使用許諾の対価及びその支払方法は次のとおりとする。
(1) 本ソフトウェア使用許諾の対価
○○
(2)支払時期
○○
(3)支払方法
 甲の指定する銀行口座に振り込んで支払う。振込手数料は乙の負担とする。

保守契約

保守契約を締結する場合には、その具体的な内容について明示しましょう。

別途保守契約を締結する形でも問題ありませんし、本契約書の中で保守契約に関する条項を整備することも法的には可能です。

単独の保守契約ひな形については以下の記事をご参照ください。

第8条(技術サポート)
甲は、第2条第4項による本ソフトウェアの検収完了後、次の技術サポートを提供する。
(1)提供するサポート
ア 本ソフトウェアの使用方法等についての電子メールによる問い合わせに対する回答
イ 本ソフトウェアの改訂版の提供
(2) 技術サポートの期間
○○
(3) 技術サポートの対価
○○

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。

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ソフトウェア使用許諾契約書を作成するときに気をつけること

以上、ソフトウェア使用許諾契約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • 使用許諾の範囲
  • ソフトウェアの引渡し
  • 権利帰属
  • リバースエンジニアリングの禁止
  • 対価の支払い
  • 保守契約

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉田尚平先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用したソフトウェア使用許諾契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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