弁護士が教える著作権譲渡契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的な著作権譲渡契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

著作権譲渡契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

著作権譲渡契約書とは

著作権は、著作権を保有するものが、第三者に対して、自由に譲渡することができます。

譲渡の対象は、ある著作物に関する著作権の全部とすることも、一部とすることも可能です。

著作権の譲渡は、口頭での約束でも成立しますが、何をいくらで譲渡したのか、どこまでの利用が可能なのか、譲渡後の著作者表示をどうするのかなど、さまざまな論点に関して、契約書がなければ解釈の余地やトラブルの可能性が高まってしまいます。

著作権譲渡契約書はこれらの論点を明確にし、将来の紛争を予防するために作成される契約書です。

なお、著作権を譲渡するのではなく、もとの著作権者に著作権を残したまま、第三者に対して利用許諾(ライセンス)をするという契約形態もあります。詳しくは以下の記事をご参照ください。

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各条項の解説

対象となる著作物の特定

はじめに、どの著作物の利用を許諾するのか、具体的に著作物を特定しましょう。

たとえば、多数のイラストを作成しているイラストレーターから、イラストの著作権を買い取る場合、「〇〇さんが書いたイラスト」というだけではまったく特定ができていません。具体的に、どのイラストの著作権を譲渡するのか、リストを作成する、クラウドストレージで専用のフォルダを作り当該フォルダに格納するなど、個別具体的な特定を心がけましょう。

第○条(権利譲渡)
甲は、本契約の定めに従い、甲の著作にかかる下記の著作物(以下「本件著作物」という。)に関する全ての著作権・・・を乙に譲渡し、乙はこれを譲り受ける。
                  記
1 著作物の名称
○○
2 著作物の内容
○○

譲渡する権利の特定

対象となる著作物が特定できたら、次は譲渡する権利がどのようなものか特定しましょう。

「著作権」という権利は、実は「複製権」「上映権」など著作権法で定められた個別の権利の集合体です。譲渡にあたっては、その一部だけを譲渡することも可能になっています。そのため、譲渡にあたっては、具体的な権利を明示することが有用です。

また、もとの著作物を改変して二次創作をする権利(翻案権。著作権法第27条)及び二次創作物を利用する権利(著作権法第28条)については、譲渡対象として明示しなければ譲渡されないものと推定される規定がありますので(著作権法第61条第2項)、必ず譲渡対象として明記するようにしましょう。

第○条(権利譲渡)
甲は、本契約の定めに従い、甲の著作にかかる下記の著作物(以下「本件著作物」という。)に関する全ての著作権(複製権、放送権、翻訳権、映画化権、本件著作物を原著作物とする二次的著作物についての利用権並びに著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含むが、これらに限られない。以下「本件著作権」という。)を乙に譲渡し、乙はこれを譲り受ける。

保証

譲渡する著作物が、他人の著作権を侵害していないことを、契約書上で保証することがあります。

たとえば、譲渡するイラストが、実はほかのイラストレーターのイラストを模倣して作成されたものだった場合、当該イラストの利用は、当該ほかのイラストレーターから著作権侵害として損害賠償請求などを受ける可能性があります。

そのため、譲受人の立場から、著作権侵害がないことの保証を求める場合には、たとえば次のような条項を挿入します。

第○条(保証)
甲は、本件著作物の全ての著作権が甲に帰属するものであり、第三者の著作権を侵害しないものであることを保証する。

譲渡代金

著作権譲渡の場合の譲渡代金は、契約当事者同士で自由に決めることができます。

別記事でご紹介した利用許諾の場合と異なり、著作権譲渡の場合には買い切りとなりますので、一括での料金設定をすることが多いです。

第○条(譲渡代金)
乙は、第○条の本件著作権の譲渡代金として、○○円を別途甲及び乙が合意する期日限り、甲の指定する銀行口座に振込み支払う(振込手数料は乙の負担とする)。

著作者人格権の不行使

著作権は譲渡することができる権利ですが、実は著作権の世界には、譲渡が許されていない権利が存在します。

それが「著作者人格権」という権利です(著作権法第59条)。

著作者人格権とは、まだ世に出ていない著作物の公表タイミングを選択する「公表権」、もともとの著作者が誰であるかを表示する「氏名表示権」、もとの著作者の意に反する変更を排除する「同一性保持権」のことです(著作権法第18条〜第20条)。

他方で、著作権を譲り受ける側からすると、いつ著作者人格権を行使されるか分からないという状況だと、著作物の利用に支障が生じます。

そこで、著作者人格権は譲渡後行使しないということを契約で定めることになります。

第○条(著作者人格権)
1 甲は、乙による事前の書面による承諾なき限り、本件著作物に関する著作者人格権を行使しない。
2 乙は、必要かつ正当と認められるときは、甲に対し、第三者に対する著作者人格権の行使を要請することができる。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。

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著作権譲渡契約書を作成するときに気をつけること

以上、著作権譲渡契約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • 譲渡する著作物の特定
  • 譲渡する権利の特定
  • 保証
  • 譲渡代金
  • 著作者人格権の不行使

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉田尚平先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用した著作権譲渡契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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