弁護士が教えるクラウド型ソフトウェア・ライセンス提供契約書の作り方

この記事では、弁護士が、一般的なクラウド型ソフトウェアのライセンス提供契約書の作り方をひな形条文つきで解説します。

クラウド型ソフトウェアのライセンス提供契約書を今すぐ準備しないといけない方は必見です。

本記事で紹介する文書はKIYACで簡単に作ることができます。

目次

クラウド型ソフトウェア・ライセンス提供契約書とは

現状、ソフトウェアの使用許諾については、①インターネット上やDVDディスクなどからダウンロードして使用する形態、②インターネット上でソフトウェアの利用環境を提供する形態の2種類が存在します。

本記事では、②についてご紹介します。

①については以下の記事をご参考ください。

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各条項の解説

クラウド型のソフトウェア提供であることの明示

はじめに、ソフトウェアの使用許諾について上記のとおり①②それぞれのパターンが存在することから、本契約はクラウド型のソフトウェア提供であることを明示します。

そして、不特定多数に提供されるクラウド型の性質上、通常、独占契約となることはありませんので、非独占契約であることも明示します。

第○条(本サービス)
甲は、本サービスを甲の管理するサーバーシステム(甲が契約した、第三者が提供するサーバーを含む。以下「本サーバー」という。)にて運用、提供する。
第○条(使用権の許諾)
甲は乙に対して、本サービスを非独占的に使用する権利(以下「本使用権」という。)を許諾する。

料金

ソフトウェア使用の対価を記載します。

特にクラウド型の場合は、昨今、サブスクリプション型の課金体系をとっている場合がよく見受けられます。この場合、月次の課金であることや、請求の時期、請求サイクル、解約手続きなどについて記載しましょう。

支払方法についても、月次のサブスクリプション課金の場合はカード決済とすることが多く、その場合はカード決済になることも明示しましょう。

第○条(料金)
乙は、甲に対し、本契約により次のとおり本使用権許諾の対価を支払うものとする。
(1)利用料金
○○
(2)支払時期
○○
(3)支払方法
甲が指定する方法によるクレジットカード決済により支払う。

禁止事項

クラウド型のソフトウェア利用に関しては、ウェブサービスの利用と同様、顧客に対する禁止事項を列挙する必要があります。

たとえばサーバーに過大な負荷をかける行為や、なりすまし利用など、一般的に考えられる禁止事項を列挙します。

禁止事項違反があった場合には契約解除や損害賠償請求が可能な建て付けとします。

第○条(禁止条項)
1 乙は、本サービスの利用に関して、次の各号に定める行為を行わないものとする。
(1)甲もしくは第三者の著作権、特許権、商標権等の知的財産権その他の権利を侵害し、又は侵害するおそれのある行為。
(2)第三者に本サービスを利用させる行為。ただし、本契約において認められる場合を除く。
(3)法令に違反し、又は違反する疑いのある行為。
(4)他者に対する差別を行い、又は助長する行為。
(5)甲又は第三者の名誉・信用を毀損する行為。
(6)詐欺その他の犯罪行為に該当し、又は該当する疑いのある行為。
(7)わいせつ物又は児童ポルノに該当する画像、文書等を送信し、又は掲載する行為。
(8)無限連鎖講を開設し、又はこれを勧誘する行為。
(9)第三者になりすまして本サービスを利用し、その他不正アクセス行為に該当する行為。
(10)コンピュータウィルスその他の有害なコンピュータプログラム等を送信し、又は掲載する行為。
(11)第三者の管理するネットワーク、コンピュータ等の設備の利用又は運用に支障を与える行為、又は与えるおそれのある行為。

(以下略)

サービスの提供中止等

クラウド型でソフトウェアサービスを提供する性質上、一時的なサービスのメンテナンスなどでサービス提供が中止、中断される可能性があります。

これらの場合に損害賠償などを受けないように、サービスの提供中止がありえること、その場合の対処などを記載しておきましょう。

第○条(本サービスの中断・提供停止)
1 甲は、次の各号のいずれかに該当する場合には、乙への事前の通知又は承諾を要することなく、本サービスの提供を中断することができる。
(1)本サービス用設備等の故障により保守を行う場合
(2)運用上又は技術上の理由でやむを得ない場合
(3)その他天災地変等不可抗力により本サービスを提供できない場合
2 甲は、本サーバー等、本サービスを提供するための設備の定期点検を行うため、乙に事前に通知の上、本サービスの提供を一時的に中断できるものとする。

(以下略)

保証の否認

不特定多数に提供されるクラウド型のソフトウェアの性質上、万人に対して完全な稼働を保証することは難しく、ベンダーに故意または重大な過失がない限りは、基本的にサービス復旧程度以外の保証責任は負担しないと定めることが考えられます。

なお、消費者向けのプロダクトでサービス提供契約が消費者契約を構成する場合は、消費者契約法第10条に対する備えが必要となりますが、本記事はBtoBプロダクトを想定しているため、ここでは説明を省略します。

第○条(保証の限度)
1 甲に起因する事由により、本サービスの提供が中断した場合には、甲の責任と費用負担のもとで本サービスの復旧のために必要な対応を行う。ただし、正常に機能しない理由が、乙の責に帰すべき事由に基づく場合はこの限りではなく、甲は、乙に対し、本サービスの復旧に要した費用を請求することができる。
2 本サービスの提供に関し、甲に故意又は重大な過失がない場合の甲の保証は、前項記載の保証責任に限定されるものとする。
3 甲の故意又は重大な過失に基づき、乙が本サービスの利用の結果損害を被った場合、甲は乙に対し、甲が乙からすでに受領した対価の額を限度として、乙に生じた直接かつ現実の損害に限り賠償の責任を負う。
4 乙は、ネットワークを経由して本サーバーに保存した乙の所有にかかるデータ等については、乙の責任においてバックアップ等の保全措置を行うものとし、本サーバーの不具合その他システムに起因する乙のデータの消失につき、甲は何らの責任を負わない。

一般条項

以上が骨格となる部分ですが、以上の他、一般的な契約に含まれる条項を挿入しましょう。

一般条項の具体的な内容については、以下の記事を参考にしてください。

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クラウド型ソフトウェア・ライセンス提供契約書を作成するときに気をつけること

以上、クラウド型ソフトウェア・ライセンス提供契約書を作成するときに気をつけるべきことは

  • クラウド型のソフトウェア提供であることの明示
  • 料金体系
  • 禁止事項
  • サービスの提供中止等
  • 保証の否認

です。

なお、今回紹介したひな形条文については、いくつかの質問に答えるだけで法律文書を自動生成できるウェブサービス「KIYAC」(キヤク)に搭載されているひな形(ご提供:弁護士法人飛翔法律事務所 吉田尚平先生)を利用しました。KIYACを使えばこれらのひな形条文を利用したクラウド型ソフトウェア・ライセンス提供契約書を数分程度で作成できますので、手元に契約書ひな形がない人は是非利用してみてくださいね。

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